スイス・バーゼルに移住したのは2019年の秋。
まだまだ未熟ではありますが、スイスで生活してみて感じる、私の素直な気持ちをメリットとデメリットとしてシェアしてみたいと思います。
移住当初は色んな悩みがあったものの、時間の経過とともに自分の中で少しずつ考え方が変化してきたり、環境に慣れてきている気がします。
これからスイスへの移住を考えている方、スイスに住み始めて悩んでいる方は、1つの意見として参考にしてみてください。
※メリット・デメリットの中にはスイスでの暮らしだけでなく、海外生活に関することも含んでいます。
スイスに移住した理由
私がスイスへ移住した理由は、スイス人との国際結婚のためです。
”日本に暮らす”という選択肢がなかったわけではないのですが、夫の仕事の都合等を考慮した上でスイスで暮らすという選択になりました。
- 旅行で来てみてスイスが好きになった!
- スイスでドイツ語を学んで、働いて稼いだら日本にも帰りやすいよね!
- 政治・経済・治安全てに置いて、安心して暮らせる国!
なんて、当時は甘い考えを持っていました。
現実は甘くなかった…!
スイス移住後、すぐにコロナが流行り始め、海外に住むというハードルが一気に高くなりました。日本が遠い…!
スイスに住んで感じるデメリット
スイスに移住して、想像していたよりもぶち当たる壁が沢山ありました。
アメリカ・ロサンゼルスに留学していた=それが私にとっての海外となっていたので、そのギャップも大きかったのかもしれません。
ロサンゼルスでの生活は、日本食に困ることはなく、通販で何でも手に入り、自然と都会が共存して毎日晴天という留学生にとってはとても恵まれている環境でした。
もちろん、移住して暮らしている方にとってはまた違った悩みや意見等があるかと思います。仕事や子育てをしている方は尚でしょう。
しかし、当時留学生だった私にとって、そこで”欲を満たすことができた”という経験が、日々の充実感に影響していたのかもしれません。
スイス移住前は、数週間の旅行で滞在することはあったものの、旅行と住んでみるのとでは訳が違い、移住したばかりの頃は、些細なことがストレスとなっていました。
さらにはそれが重なって不満を夫にぶつける日々。
まず、日本の文化がほとんどないスイスは本当に異国の地だということ。
食や生活スタイル、生活用品等、自分に合うものを探すのに時間がかかりました。(いまだに模索中なことも多々あります。)
今まで東京で暮らしていた私は何一つ不便しない生活をしていて、逆に便利すぎる環境に麻痺していたのかもしれません。
日本の当たり前がここでは当たり前ではないということ、慣れるまでは苦悩の連続です。
今では慣れたことと、諦めることも学んだので、移住した当初よりは気持ちが落ち着いています。笑
買い物が不便
スイスではECサイトが発展していないことに一番の衝撃を受けました。
日本ではアマゾン、楽天、ヤフーをはじめとしたECサイトで何でも見つけることができ、ECサイトの選択肢も豊富です。
スイスでは基本的には欲しいものを直接そのサイトで購入するスタイル。
規模感は違いますが、
ガジェット系や日用品はGalaxus
洋服ならZalando
を利用するユーザーが多いです。
アマゾンくらいはスイスにもあるだろうと期待していましたが、そんなことはありませんでした。
私の住むバーゼルはドイツが近いので、ドイツのアマゾンを利用して、ドイツの住所に送ってもらう。もしくは商品によってはスイスに届くものもあったりして助かっています。
そして、スイスでは街に出ても、手に入らないものが多いというのも現実です。日本のように安くて痒いところに手が届くような商品を求めてはいけませんね。
日本の何倍もお金を出しても、こんなもんか…と嘆くことが何度かありましたが、そんなことにも慣れてくるもので、物欲が減り、お金を遣うことも少なくなりました。
ポジティブに考えると、買い物が不便=節約になります。
ミニマリスト的思考にもなってきました。
つまらない
東京やロサンゼルスにいた時は、行く場所が山ほどあって迷うくらいでしたが、ここでは気軽に行けるところの選択肢が少ない。
自然が沢山あるので、公園や森林などは困りませんが、娯楽施設や都会が好きな人にはつまらなく感じるかもしれません。
東京だったら東京都内でも栄えている場所が沢山ありますが、スイスでは基本的にその都市に行ったらその都市の中心部のみが栄えています。(栄えてると言っても…ですが。)
何時間か車を走らせればうっとりするような絶景に出会えますが、基本的な行動範囲内では飽きてしまい、この国の人はどんな風に遊んでいるんだろう…と疑問に思うことが何度もあります。
食が難しい
美味しいものもありますが、ずっとヨーロッパの食事では胃が疲れてしまいます。
外食すると高いわりに感動がなく、家で食べた方が良いな。と、思うことが多々あります。
バーゼルは他の都市に比べると日本食レストランも少なく、スイス全体で日本食材は手に入りづらいです。
また、テイクアウトをして手抜きをすることすら難しいのです。
私の住む地域のデリバリーはイタリアンのみで、日本のようにお惣菜やお弁当を買える環境は整っていません。
体調が悪い時こそ日本のご飯が食べたくなるのですが、国際結婚をしていると日本食を作るのはどうしても私になります。
割り切って自炊な日々ですが、日本の食生活に慣れているとちょっと寂しく感じたり面倒臭く感じます。
つわりの時や出産直後の炊事が辛かった…
海外在住者の自炊レベルはレストラン並みに高い人が多く、尊敬する日々です。豆腐や味噌、もやしや納豆など、自らの手で作り上げている人までいます。
物価が高い
移住前からわかってたことですが、スイスの物価はやっぱり高い!
物にもよりますが、日本の倍くらいの物価です。
ビックマック指数ではトップにランクインするスイス。2024年のスイスのビックマック(単品)の価格はCHF7.80日本円で約1,326円です。家族3人でふらっとマックに行っても、3,000円では収まりません。
高い保険料を払っても、医療費が年間CHF2,500(日本円で約42万円)を超えないと保険適用されなかったり、(保険プランにもよります。)
歯医者はレントゲン撮らずに歯を1本だけのチェックで2万円ちょっと。歯が痛くても耐えるようになりました。笑
歯だけではなく、ちょっとしたことでは病院へは行かず、薬局の薬剤師さんに相談して薬を購入して様子を見る、というスタイルに変わりました。
ヨーロッパ圏で全く同じ商品でもスイスプライスになっていることがあったりしますが、賃金に合わせた物価になっているので仕方がないですね。
言語の上達
人のせいにすべきことではないのですが、スイス人は英語が上手でドイツ語が上達しない!という問題が発生します。
ありがたいことに、スイスでも英語で暮らせてしまっています。英語を話せるか伺うと、謙虚に「少しなら話せるよ」と答えるスイス人ですが、十分に話せる人ばかり。
私の義家族も全員英語を話せます。
日常の生活からは、普段スーパーなどで見聞きするドイツ語くらいしか覚えることができません。
私の住む地域はドイツ圏なので、生活するにあたってドイツ語を学ぶに越したことはないのですが、ドイツ語を学んでも家族で話すのはスイスドイツ語というのが、モチーベーションの低下に繋がっています。
子供がいることで、ドイツ語を学ぶ意欲が高まりますが、長い間英語で暮らしている人も多く見かけます。
友達や家族に会えない
友達や家族に会えないのはやっぱり寂しい。
期間が決まっていたら頑張れるものの、いつ友達や家族に会えるのかわからない状況はなんだか心細くなります。
特に私が寂しく感じたのが、妊娠・出産した時です。
心身ともにいっぱいいっぱいになりながら夫以外の頼りどころがない辛さや、幸せを直接共有できないことに苦しみました。
妊娠・出産直後はホルモンの影響などもあるので、さらにそういった気持ちが強くなる方もいるかもしれません。頑張るしかないシチュエーションが沢山あるかと思いますが、無理せずに頑張りすぎないことが大切ですね。
SNS普及のおかげで、日本にいる友人とも気軽に近況をシェアできたり、コミュニケーションが取れるのは良いところだと感じています。
冬が長くて天気が悪い
スイスの季節は日本と大体同じですが、冬の時間がちょっぴり長いです。10月頃から寒くなり始め、3月頃まで寒さが続きます。
さらに、冬の季節になると、どよんとした曇り空な日々が続きます。青空と暖かい気候が好きな私はゲンナリ。
スイスでは冬の日照時間が短いため、ビタミンDを別で摂取する人も多いです。
同じ海外生活でもロサンゼルスは毎日晴天で暖かい気候だったので、どんなことがあっても毎日頑張ろうという気になれたり、やる気がみなぎっていたことを思い出します。
一方で、スイスの夏は日照時間が長く*、カラッとしていて過ごしやすいのは良いところ。
移住したのが10月で冬に向かっていくときだったので、これから移住を考えている方には夏に向けた季節をおすすめします。
寒くて天気が悪いと室内しか選択がありませんが、日本のようにショッピングセンターが充実しているわけでもなく…家時間ばかりが増えます。
スイスの冬はとにかくしんどい!
*日照時間が長いのは、サマータイムも影響しています。
>>スイスと日本の時差 サマータイムについて
先が見えなくなる
「ここに一生住むの…?」と考えると、何だか悲しくなることがあります。
スイスは好きで住みやすいのですが、”老後もここで過ごすの?家族や友達と一生遠距離?老後もヨーロッパの食事?”などと考えだすと止まりません。今から老後のことを考えても仕方がないのですが。
「いつかは日本に帰る」とわかっていたら、もっと違った見方ができるんだろうな。と思ったりします。
子供ができるとさらに動きづらくなるので、将来についてしっかり家族で話し合うことが大切ですね。
スイスに住んで感じるメリット
デメリットをたくさん挙げましたが、スイスに移住して、悪いことばかりではありません。スイスに住んで良かったと思うことやスイスの良いところも挙げてみます。
気軽にヨーロッパ旅行ができる
今はコロナで難しい部分もありますが、旅行好きには最高の条件が揃っています。
陸続きで隣国に移動しやすく、飛行機もLCCがあって格安で行ける。
ヨーロッパ各国は日本に比べると小さいので移動が簡単で周りやすいです。
スイスはヨーロッパの中心に位置しているので、どの国へも足を伸ばしやすいのもメリット。
フランス・ドイツ・イタリア・オーストリアが隣国って、なかなか最強なんじゃないかな?と思うのです。
スイスの列車のチケットが高いので、隣国に行ってしまった方が安上がりなんてことも全然あります。
私の住むバーゼルはドイツとフランスとの国境なので、気軽に隣国へ買い物に行けるのもメリットです。
治安が良い
スイスは治安が良いので、基本的には安心して暮らすことができます。
物価が高いことや気候が関係しているせいか、他のヨーロッパの国と比べると物乞いする人も少ないです。
都市部の深夜などは日本と同じように注意が必要ですが、普段は行き交う人と挨拶を交わしたり、ほのぼのとした穏やかな空気が流れています。
治安が良いことに加えて、街もとても清潔で綺麗。
街や道路はしっかりと整備されていて、歩いていてゴミもほとんどありません。
電車やトラムも時間通りに来るので、日本にいるのと同じくらい快適かもしれないです。
刺激が増える
新しい環境に身を置くだけで刺激が増えますが、これが海外だと尚更です。
新しい場所、人、言語、情報、景色など、新しい文化に触れることによって刺激を受けて、考え方が変わったり、視野が広くなったりします。
仕事や子育て、日常生活をするにも日本とは違った世界が広がっているので面白味があり、辛いことや楽しいことなど、海外での経験は特別で自分の糧になると思っています。
強い意志を持てる
YESとNOが日本に居る時よりもはっきり言えるようになります。
海外では自分自身の考えをしっかり持って行動しなければならない環境です。
日本人の謙虚で相手の顔色や空気に合わせるコミュニケーション能力は素晴らしいですが、海外では「それっていったいどっちなの?」と思われることや、はっきり断らないとそのまま流されてしまうシチュエーションもありえます。
また、日本語のような濁した表現が他の言語に少ないのも一つかもしれません。
子育て、教育環境が良い
子育てをしやすい環境が整っています。
赤ちゃんを連れて街に出ると、優しく手を差し伸べてくれる人が多いです。
お店で赤ちゃんが泣いていると椅子を用意してくれたり、トラムや列車に乗る時にベビーカーを持ち上げてくれたり、お店に入る時にドアを開けてくれたり…と、短期間でも助けてもらった経験が沢山あります。
また、一般的には公立校であれば義務教育中は学費が無料(幼稚園〜)。大学も日本と比べ物にならないくらい安く通えます。
幼稚園以前の保育園などは高額なので、注意が必要です。
>>【海外子育て】スイスで生まれてから幼稚園入園までの過ごし方と遊びグループ「Spielgruppe」
そして、スイスの公用語が4つあることや外国人が多いことが影響しているのか、スイスでは2・3か国語話せるのが普通です。
人種もさまざまなので、グローバルな環境でのびのびと子育てができます。
自然がたくさん
大自然が広がるスイス。日本では見たことのない絶景に出会えたり、どこへ行っても澄んだ空気を吸うことができます。
コロナ禍になってから「自然が豊かな国でよかった」と改めて感じます。自然スポットが沢山あり、人口も少ないので、観光地でも混雑が少ないのも良いところ。
外で子供と遊べるところも沢山見つけることができます。
ビル街などはなく、とにかく自然に癒されたい人にスイスはぴったりなところです。
気持ちに余裕ができた
つまらないと不満を漏らしましたが、その分スイスに住んでから気持ちに余裕ができました。
東京に住んでいた頃は常に予定が入っていて、時間に追われる日々を過ごしていました。
家族を持ったというのも大きいのかもしれませんが、スイスで暮らし始めてからは時間に追われることがなくなり、予定を入れない日があることが気持ちの余裕=充実につながっている気もします。
そして、スイスにいると良い意味でも悪い意味でもお洒落をしなくなります。
基本的に夏はTシャツにジーンズ・スニーカー、冬はパーカーにジーンズ・スニーカー。最後にヒールを履いた日が思い出せないくらいです。
お洒落する機会がなくなったことと、日本のようにみんながみんなお洒落ではないのも影響しているかもしれません。
おかげで洋服を買わなくなり、最低限で生活できる、ミニマリスト思考になりました。
家も広くて天井が高いので、開放的な気持ちでいられます。
食事が手抜きできる
食事の手抜きができるようになりました。
日本の基本の食事スタイルとスイスの食事スタイルが大分違います。日本は手が込んでいる、スイスはシンプル。
食卓に乗る品数も大分違うのです。
スイスに住み始めた頃は気合いを入れて何品も作っていましたが、どんどん手抜きになりました。
メインのおかずとサラダとご飯なんてことがしょっちゅうで、とても楽です。
さらには食洗機があるので、食洗機にお皿を入れておしまい!
これは離乳食についても同じ。日本の離乳食に比べるとシンプルで簡単です。
新鮮な野菜やBIO商品が多い
農家直売所に買いに行けたり、スーパーを選ばなくても新鮮な野菜が手に入ります。
BIO食品(オーガニック)にも力が入っていて、健康志向には嬉しい環境です。
一般的なスーパーでも「BIO」の文字を多く見かけ、値段もそれほど高価ではないため、気軽に手に取ることができます。
スイスの物価は高いですが、野菜は日本と変わらない値段で買うことができ、果物は日本よりも安いです。
洋服や小物などもBIO商品が沢山あるので、身体を気遣った生活を気軽に取り入れることができます。
冬の家が暖かい
冬のスイスの家の中は24時間暖かいです。外が寒いのを忘れるくらい快適。さすが、寒さに慣れている国ですね。
蛇口も直ぐにお湯が出てきます。
日本の冬をすっかり忘れて、冬のスイスの家に慣れてから日本に帰ると底冷えしそうになりました。
一方で、夏のスイスは暑いです。新しい建物以外は基本的に冷房機能がなく、レストランも窓を全開に開けています。冬が暖かい分、夏が暑いのがデメリットですね。
給料が高い
【スイスの平均年収】US$79,204 (約1140万円)
【日本の平均年収】US$42,118(約606万円)
<$1=144円で換算 2024年8月>
(参考資料:OECD Average wages2023)
物価や税金が高いスイスですが、その分給料も高いです。マクドナルドの時給も3,000円超えという、日本人からすると夢のような話‥。
スイスで贅沢な暮らしをするのは簡単ではありませんが、外国へ行った際にはちょっとお得に感じることができますね。
スイスは世界年収ランキング3位で、その給料の高さから、各国からスイスへ就職したい人が跡を立ちません。
近隣国からスイスに働きに来る人も多い!
おわりに
今の私が感じるリアルなスイスでの暮らしのメリット・デメリットです。
どこへ住んでも良いところ、悪いところがあるのが普通ですが、自分に合った暮らし方や解決策を見つけていけると過ごしやすくなります。
とはいうものの、私もまだこの国で模索中です。
海外移住は困難も伴いますが、プラス面に目を向けて、その国素晴らしいところを1つでも多く発見できたら幸せだと思っています。